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  1. 5/2 (金) 1:40

    コンビニ人間

    コンビニ人間という作品を読んだ。 主人公は、36歳の女性。 大学の頃から、18年間、コンビニでアルバイトをしている。 彼女は「普通」じゃない。 幼稚園の頃は、綺麗な小鳥の死骸を見て、 「お父さんは、焼き鳥が好きだから、持って帰って食べよう」と言う。 当然、周りのお友達は「かわいそう」だと言って、 お墓を作ったが、彼女からすれば、 わざわざ食べられるものを、土に埋める意味が分からない。 小学校でも度々、問題を起こしている。 男の子同士の喧嘩を止めろと言われて、 男子児童の頭を、思いっきりスコップで殴った。 女性教員がヒステリーを起こした時は、 ヒステリーを止めようと、教員の下半身を裸にした。 殴ったり、脱がせたりすれば、目的は達成されるが、 周りは、なぜか自分のことをおかしいと言う。 周囲の大人たちは、虐待やネグレクトを疑ったが、 主人公の家庭は、絵に描いたように幸せな家庭だ。 カウンセリングにも行ってみたが、 「愛情を注いで、ゆっくり見守りましょう」と、 薬にも毒にもならないことを言われるだけ。 以来、彼女は、友達も作らず、必要以上のことは喋らず生きていく。 トラブルは無くなったが、両親は、 このまま生きていけるのかと、心配していた。 そんな時、コンビニの求人を見つける。 彼女にとって、コンビニバイトは転職だった。 マニュアル通りに生きるだけ。 コンビニでは、作るべき表情まで教えてくれる。 彼女は、コンビニで働くためだけに、 最適化された「コンビニ人間」として生まれたのである。 彼女にとって、マニュアル化されたコンビニは居心地が良かった。 私は、そんな彼女を見て「ケーキの切れない非行少年たち」を思い出した。 ケーキの切れない非行少年では、何かしらの罪を犯して、ネンショーにいる境界知能の子について書かれた作品だ。 ※ネンショー=少年院の略 ※境界知能=知的障害と診断されるレベルではないが、 普通の人よりも、知能指数が低い状態のこと。 時に、境界知能の少年にとって、ネンショーは、居心地の良い場所になりうる。 良くも悪くも、ネンショーでは、 刑務官の話を聞いて、指示に従っていれば、 大きなトラブルに発展することがない。 自由には、責任が伴う。 自由を享受したいなら、その自由が人に与える影響や、 行動を起こした結果を想像する能力が必須だ。 しかし、世の中には、自由を享受するために必要な想像力が欠如している人がいる。 そんな人たちにとって、マニュアル通りに生きるだけの不自由な世界は、居心地がいい。 コンビニ人間の女性には、ASDの傾向がある。 ※ASD=知的な遅れがないタイプの自閉症。発達障害の一つ。 自由を謳歌するのに必要な想像力が欠如しているから、 マニュアル化されたコンビニに居心地の良さを感じる。 私は、良くも悪くも「普通の人」だから、 36歳独身で、バイト経験しかない女性を見つけると、 お節介ながら、心配してしまうだろう。 幸せの形は、多種多様と言いつつ、 「普通じゃない」人間に、プライバシーもへったくれもない。 「なんで結婚しないの?」 「就職しないの?」などと無神経な質問を投げかける。 「普通」の人間として、今までの自分の発言に反省すべき点があったことに気がついた。 本当に人生は色々で、周りから見れば、心配になる人も、 その人にとっては、最高の人生なのかもしれない。 私は、そういう幸せを理解できる人間でありたい。

    枢木レイ
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